「お客様。とてもお似合いですよ」
鏡の前でむずかしい顔をしていた女性に向かって、わたしはにこやかに告げた。
「そう? なんだかちょっと、太ももが気になるんですけど」
細身のジーンズを試着した女性は、「おしり、パツパツじゃない?」と、少し恥ずかしそうに言った。
「いえ、きれいに履いて頂いていると思いますよ。もう少し太目のシルエットがお好みですか?」
「うーん。腰は合うんだけど、太ももはちょっときついんだよね。むずかしいな、パンツ選び」
女性はそう言いながら、苦笑いの表情で試着室に戻る。
カーテンを閉めて靴をそろえると、レジカウンターの中から、三浦くんがわたしに向かってにこやかに頷いてくれた。
わたしは三浦くんに笑みを返して、お客様の着替えが終わるのをハンガーを整えながら待つ。
わたしがこのセレクトショップに勤め始めて、半年になる。
それまでは同じ客商売でも、飲食店のアルバイトや、企業のテレホンセンターで案内の仕事しかしたことがなかった。
友達のつてでアパレルの仕事の話をもらったとき、華やかな業界だし、おもしろそうだなと気軽なきもちで勤め始めたのはよかったけれど……。
なかなか、服は売れなかった。
日本各地に支店が数店舗ずつある人気セレクトショップなので、うちの店のショップバッグ欲しさに買い物をする人もいるほどなのに。
一体、なぜだろう……。
わたしが接客したお客さんは、九割の確率で購入の判断をしぶった。
わたし自身にセンスがないせいで、そんな店員の言葉を信用できないからなのだろうか。
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